米国国立アカデミー(NAS)は「Primary Careとは、患者の抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、
家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスサービスである。」と定義し、
その理念としてACCCAすなわち、Accessibility(近接性), Comprehensive(包括性), Coordination(協調性), Continuity(継続性), Accountability(責任性)を提唱しています。
日本プライマリ・ケア連合学会のホームページには、「身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療」と一般の方向けに説明されており、
5つの理念として、NASの定義に基づいて、次のように提示しています。
プライマリ・ケアの名著、A.Goroll編纂のPrimary Care Medicine Office Evaluation and Management of the Adult Patient 8th edをひもとけば、 以下の4つの視点でプライマリ・ケアを定義すべきであるとのべられています。
様々な視点からみたプライマリ・ケアの定義
- 診療
- 組織構成と技術のレベル
- 医療システム内での患者ケア機能
- 教育・修練および応用研究
診療には
- 医学的診断と治療
- 心理学的診断と治療
- 様々な背景をもつ患者のあらゆる病気における個別性のあるサポート
- 予防、診断、治療、予後に関するコミュニケーション
- リスク評価、健康教育、疾患の早期発見、行動変容を通じた慢性疾患の予防とケア
が含まれるとされ、
組織構成と技術のレベルは、まずはじめに提供する地域密着型の医療サービスのレベルが担保され、二次、三次医療とは区別される必要があり、
行政で統合されたサービスを提供する場合は「地域社会志向」と規定されると記されています。
OECDデータをみますと、
と示されており、行政でプライマリ・ケアのサービス範囲が定められてはいません。2017年の福井らの報告によると、様々な立場のprimary care giverが存在することがわかります。
OECDデータでは、医療の質の評価項目に「効果的なプライマリ・ケア」をいれており、本邦にプライマリ・ケアの範囲規定がないにもかかわらず、高く評価されていることがわかります。
国民の健康状態については、回避可能な死亡率は低く、慢性疾患の罹患率も低いことが示されています。 人口100万人あたりの新型コロナウイルス死者数を主要国で比較するとプライマリ・ケアサービスの規定がある国々と比較しても,格段に死亡者数が少ないことがわかります。
一方で、平均寿命が長く,自分は不健康であると自己評価する人が多いため、国民の健康を下支えする機能が求められていることもわかります。
Gorollのテキストブックでは、医療システム内での患者ケア機能について、先ずはアクセスが容易であり、ケアは継続的、あるいは連携によって担保され、
長期的に責任制を有し、幅広い症状やニーズに対応した包括的ケアが求められるとともに、常に本邦の医療資源,
財政と患者の利益保護の両側面から実践されることが求められると述べられています。すなわち、本邦においても、医療介護に関わる多職種、
行政一体となった取り組みがプライマリ・ケアの発展には必要です。
Gorollのテキストブックは成人対象に書かれていますが、プライマリ・ケアは「ゆりかごから墓場まで」あらゆる年代に提供されることが必要です。
皆さんとともに、本邦にそして「神奈川愛」溢れるプライマリ・ケアを担っていきましょう。